Kyoto Brewing Co. - Wholesale
歴史 (History)
商品表示上では、原料のひとつとして「オレンジ果皮」(オレンジピール)と表記していますが、製造途中で上質な和歌山県産の伊予柑(のピール)を入手することができましたので、オレンジ果皮の代わりに使用することになりました。
樽生商品の数に限りがあるため、1店舗1本までとさせていただきます。
10周年を記念して造った伊予柑ピールとオークのウッドチップが香るアニバーサリーエール
私たち京都醸造が10周年を迎えるにあたり、造られるこのビールでは一旦原点に立ち返ることにしました。そして、ブルワリー設立に欠かせなかった人物の一人、カナダ・トロントにあるGodspeed Breweryのオーナー兼ヘッドブルワーであるルークに声をかけました。ルークは、京都醸造が会社として始まる前からの知り合いで、要所要所で的確なアドバイスをたくさんくれた人物であり、一番最初の仕込みにも助っ人で来てくれた古くからの仲間です。(詳しくはブログ記事にて)
では、そんな彼と造る特別なビールとは?
まず、これまでに誰もやったことのない、新しくてユニークなものであり、しっかりとインパクトがあるものにしたいと考えました。
何度も話し合いを重ねた結果、あるカクテルからインスピレーションを得たビールを考案しました。それは「スモークド(燻煙)カクテル」の技法です。これはカクテルをグラスに注ぐ前にグラスにスモークを充満させ、軽いスモーキーさをカクテルにまとわせるという手法で、風味に奥行きを加え、最後までじんわりと余韻を残す香りを生み出します。
もちろん、ビールを一杯ずつスモークを満たしたグラスで仕上げるわけにはいかないので、私たちはこのアイデアをそっくりそのまま製造工程に入れ込み、再現することにしました。そう、ビールが入る前の2000リットルのタンク全体をスモークで満たすことにしたのです!
アイデアの元となったカクテルというのは「オールド・ファッションド」と呼ばれるもので、ウイスキーをベースに、ビターズ(リキュール)と砂糖、そしてオレンジピールが使われます。しかし、このビールでは、オレンジの代わりに和歌山産の伊予柑のピールを使いました。このカクテルは、スモークとの相性も良く、ピールに火をつけて香りを立たせる手法とも相性抜群です。
ビールのベースはダークフルーツやカラメルの風味を表現するモルトをブレンドして構成し、そこにライ麦麦芽も加えることで、ウイスキーのようなスパイス感と甘みを引き出しました。ホップは、イギリスのEast Kent Goldingsを控えめに使い、ビールの味わいを安定させる役割にとどめています。そして、よりまったりとしたキャラメル感が引きだせるように約3時間という長時間煮沸を行いました。
仕上げには、伊予柑のピールを甘い香りを引き立てるためにキャラメリゼしたものと「グレインズ・オブ・パラダイス(楽園の穀物)」という異名をもつギニアショウガを煮沸終了時に加え、アクセントとなる柑橘とスパイス感でこのビールの個性を固めます。
そして、いよいよ“クレイジー”で“楽しい”工程へ。ビールをBBT(ブライトビールタンク)に送りこむ前に、タンクの中にオークのウッドチップを設置し、軽くCO₂で満たします。その状態でウッドチップに火をつけ、タンクを密閉状態に。酸素が燃焼されていき、やがて酸素が尽きると火は消え、代わりにウッドチップが燻された煙でタンク内が満たされます。
その状態のタンクにビールを注ぎ込むことで、スモーキーな風味がビールに移ります。そして焦げたオークチップの上でビールを熟成させることで、やわらかなバニラ香やオークのニュアンスも加わり、うっとりするようなフレーバーをもったビールが出来上がります。
BBTの中に火を入れて、そのスモークを使ってビールを造った醸造所はほとんどないと言えるでしょう。そういうことでも、このビールは歴史的にユニークで、10年目という節目にふさわしい特別なビール、まさに祝杯のための最高の一杯になりました。