Kyoto Brewing Co. - Wholesale
消えたブランケット (Where is my blanket?)
野生酵母(ブレタノマイセス)で時間をかけて発酵させたビビッドな柑橘香が光るIPA
「落ち着くような匂い。でもちょっと臭い。いや、だんだん良い香りに感じてきた……いや、やっぱりどうなんだ?」——そんな感覚が延々とループするような、不思議な魅力があります。
しかし、これを主発酵に用いるとどうでしょう。そこには湿った土や馬のブランケットを思わせる香りは見当たりません。代わりに現れるのは、パイナップルを思わせるトロピカルなフレーバーや、ビビッドな柑橘のアロマ。
ブランケットを期待していた方には少し肩透かしかもしれませんが、これもまた野生酵母のなせる業なのです。
しかし、この酵母を一次発酵で使用すると、そうしたファンキーさは抑えられ、代わりに非常にトロピカルでパイナップルのようなエステルが生まれ、現代的なIPAにぴったりのキャラクターを引き出してくれます。つまり、このビールにはいわゆる馬のブランケット的な独特な香りは一切ありません。
レシピ設計では、軽やかさを保ちながらもやや複雑なモルトの構成を考えました。ミュンヘナーモルトとウィーンモルトをブレンドし、小麦麦芽とゴールデンプロミスをベースにすることで、クラッカーやビスケットのような軽やかでありながた滋味深い風味を重ねています。これにより、ブレット酵母由来のドライなフィニッシュをしっかり支える奥行きとモルトの複雑さを持たせています。
ホップはトロピカルな個性を前面に押し出すために、Azacca、Citra、NZ Cascade、Strata、そして少量のAnchovy(←これ魚のアンチョビではなくホップなんです)を使用しました。このブレンドにより、パイナップルやシトラス、ベリー、パパイヤ、ほのかな松脂感、さらに甘いスイカのニュアンスが加わっています。
また、このビールを造る上で。特別な取り扱いが必要でした。以前、Vertereと乳酸菌を使ってビールを造った時と同じように、ブレタノマイセスも他のビールにとっては汚染源となり得るため、“隔離”された環境で仕込みを行いました。こうしたリスクがあるため、トロピカルなフレーバーを持つビールには非常に適した酵母であるにもかかわらず、ブレットIPAは決して一般的ではないのです。
私たち自身もこのスタイルに出会うのは何年も前に造った「野生主義」以来ぶりかというほど久しぶりでしたが、ぜひブレットファンの皆さんにも、この酵母のもつ別の一面を体験してもらいたいです。そして、私たちにとっても少々危険を冒し、とても長い時間をかけて造っただけに、思い入れの強い一杯です。